気仙沼のみしおね横丁にある『 Warung Mahal (ワルンマハール) 』は本格的なインドネシア料理を楽しめるお店だ。
インドネシア語でワルンは屋台、マハールは高いの意。屋台といえば一般的には安いというイメージだが、あえて『ワルンマハール』(高級屋台の意)という店名にすることで、クスっと笑ってもらえたらいいなとユーモアも込められている。
店長の小出さんは、高校生の時から海外支援に興味があったそう。高校卒業と同時に東日本大震災があり、復興に際して自分に出来ることを考えつつ、ボランティアとして南三陸に行った経験を持つ。そして気仙沼という地にたどりつき、現在に至る。
「気仙沼の魅力は、よそ者に対して寛容であること、そして、自分の本質に気付いてありのままに生ききれる場所が気仙沼なんです!」と力強く語ってくれた。
全てのメニューに豚肉を使用しておらず、気仙沼の食材やインドネシアの調味料を中心に使用してムスリムフレンドリーなお店づくりを心がけているという。とはいえ、オープン間際まで店名しか決まっておらず、メニューさえも決まっていない大変な状況だったそう。インドネシア料理本を熱心に読み込み、都内のインドネシア料理店を研究する試行錯誤の日々は、楽しくもあり大変でもあったと笑顔で振り返る。
調味料は現地のものを使う本格派。人気ナンバーワンはミーゴレン。ご来店の約6割がインドネシア人だそうで、万人受けするその味にすっかり魅了されたファンも多い。「ミーゴレン(600円)」の見た目は日本の焼きそばに似ている。目玉焼きを崩しながら食べればマイルドで甘辛な旨さが広がる。シンプルな料理だがあと引く旨さで、このアジアンチックな香りが異国を思い出させるのかもしれない。
インドネシア料理ときいてパッと思い付くのは、やっぱナシゴレン!「ナシゴレン(600円)」はインドネシア風チャーハンというだけあって、しっかり焼き飯感がある。チキンやエビの具材もたっぷり。スパイシーでありながら甘みがあるのが特徴的。フライドオニオンとピリ辛ソースとともに食べると、より美味しさに深みが増す。
「インドネシアカレー(700円)」本日は、気仙沼ならではのサメ肉カレー。ココナッツの甘い香りとスパイスの香りが食欲をかきたてる。辛味は控えめでマまろやか、サメ肉もやわらかい。食事と一緒に頂くのは、見たことのないユニークなジュース。「アボガドジュース(300円)」は濃厚なアボカドにもかかわらずサラッとした喉越しで、チョコレートの甘さとよく合う。「キュウリジュース(300円)」の初めて味わう独特のさわやかさは日本の暑い夏にもピッタリ。野菜独特の青臭さはまったくなく、とても飲みやすい。食物繊維もたっぷりで便秘解消も期待できるとか。
異国の味を堪能し、気分はすっかり旅気分!日本にいながら遠い異国を思い出せるこの店は、気仙沼に住んでいるインドネシア人にとって、なくてはならない存在に違いない。その理由は単にふるさとの味を楽しめるからだけではなく、ワルンマハールの斜め向かいにある、イスラム教徒がお祈りするための礼拝所の存在も大きい。インドネシア人の約9割はイスラム教徒であるため、気仙沼にもお祈りの場所が必要だと考え設立したという。
インドネシア料理とモスク。至極自然な流れだが、なかなか日本には見当たらない。実習生に寄り添った街づくり、そういうビジョンをもとに日々お店に立っているという。今後も気仙沼に住んでいる実習生の生活の実態から課題を見つけ出し、それを店づくりに生かしつつ、ひいては店を通しての街づくりになればと意気込みを語ってくれた。
「この仕事は自分にしかできない、天職です!」と言い切る姿がまぶしく感じられた。