気仙沼にある『○安やきとり』は、昭和7年創業の老舗である。震災後は、親方である岩槻さんの娘さんご夫婦が、80年以上も続いている○安ののれんを繋げるためにと、地元に戻って一緒にお店に立っている。店内には、震災前のお店の写真や、お客さんと笑顔で写る親方の姿が数多く飾ってあり、長い歴史を感じる。
まずは、ご来店したお客様のほとんどが頼むという「やきとりミックス一人前5本(450円)」をいただくことに。こちらの「やきとり」は、豚モツを七輪を使って炭火でじっくり焼いたもの。カリッとした焦げ目とたっぷりのタレが実に旨そうだ。焼きたてを熱々のうちにほおばる。自家製のタレはしっかり甘いがけっして甘すぎない。一串でビール一杯は軽く飲み干せる。お酒好きにはたまらない旨さだ。臭みも無くとてもやわらかいのは、仕込みに手間をかけている証拠だろう。炭火で焼いたからこその香ばしさも加わって旨さ倍増である。お好みで和がらしなどを付けても良し。
「かしわ」は岩手の地鶏だそうで、これまたプリッとした歯ごたえがたまらない。二代目になってからは「カレー味のやきとり」も定番メニューだそう。辛さはなくカレーの風味がふわっと鼻に抜ける感じがクセになる。タレとは一味違うやきとりを楽しむことができる。
そして、これらのやきとりに合わせるのが「コーヒー焼酎(380円)」である。コーヒー豆を焼酎に入れて作るという。コーヒーの香りが引き立っていて口あたりが良くとても飲みやすい。ついつい飲みすぎてしまうのも仕方がない。この、焼酎とコーヒーのベストマッチにハマる人は今後ますます増えるにちがいない。
やきとりを堪能し、お次は「豚タン(500円)」もいただく。薄切りのためやわらかいものの、コリコリした食感がいいアクセントになり、噛むほどに旨みが広がるのを感じる。牛タンよりクセも無くあっさりしているので、タンが苦手な人にも一度トライしていただきたい。
そして、忘れてならない一品が「湯豆腐(350円)」である。奇をてらわないシンプルなメニューだが、なぜだか、ものすごく美味しく感じる。あっつあつの湯豆腐を、熱っ!と言いながら、薬味たっぷりのタレで食べるのが最高だ。
世代を超えて愛されている気仙沼のソウルフード、○安のやきとり。幼い頃から慣れ親しんだ味を、大人になって食べたとき「これこれ!この味!」と懐かしく感じる瞬間は、きっと幸せに違いない。やきとりとともに、想い出も一緒に味わえる素敵なお店が、令和の時代もその先も、ずっとずっと繋がっていきますように。